売り買いの記帳   売買・労務費など本業の部分は、営業のキャッシュフロー

 小生は経理の専門家ではありません。経理の知識を必要と感じ、教えてもらっているところです。ここにまとめたのは、勉強した内容をまとめたものです。ですから初歩的な内容ばかりです。

 経理は、専門分野なので、企業の場合は顧問税理士や公認会計士がいると思います。税理士さんに伝票の束を預ける方法と、自分で経理ソフトに記帳し税理士さんにチェックしてもらう方法があります。自分で記帳できるようになると、損益が即時にデータとして把握でき、ソフトの分析能力も使えるので経営力は格段に高まります。

 通常、記帳のほとんどは売買です。

 通常の企業は、仕入れた原材料や商品や、費用としての電力や消耗品などの費用を購入し、これに人や技術や設備の働きにより付加価値を付けて、お客様に販売することが本業ですね。売買は本業の中核の取引です。

 売上は、商品やサービスを売ってお金を貰う(か「貰う権利=売掛金=債権」を得る)交換ですが、経理の記帳では「売上」とし、いただくお金(か「お金を貰う権利=売掛金=債権」)は現金や預金や売掛金や未収金で計上します。
 商品や原材料は、購入した月に使い切ったということにして全額をその月の費用と見なします。実際の残り分などは在庫になるので、期首と期末の棚卸の在庫の差異で調整します。簿記上では何を買ったか売ったかは摘要欄に書きます。

    (発生主義の記帳)
  企業会計では、企業間の定常的取引は、普通は納品書を月末締め切りで集計し、請求書を起こし、翌月末にまとめて支払いし、集金します。帳簿への記入は、購入や売り上げた月末の日付などで取引相手ごとに金額を記帳します。発生主義の原則といい、期間(月次など)で収支を対応させ、損益を明確にする大事な原則です。

  それでは、実際の伝票を見てみましょう。実際の伝票の形を、具体例で見てみてください。一行ずつ読み込むように見てゆくと、だんだんと、共通する部分が見えてくると思います。

 下に例示したものは、すべて複式伝票です。複式伝票は、取引の記帳形式で、左側が借り方といいお金の使い先の場所で、右側は貸し方といいお金の出元を書く場所です。左側と右側には、複数の内容を書くことも出来ますが、左右それぞれの合計は、必ず一致していなければなりません。

 伝票は、左側の勘定科目・補助科目・金額、右側の勘定科目・補助科目・金額、取引内容を説明する摘要となっています。

  複式伝票では、左右が符号(+−)の意味があります。同じ勘定科目で、右側に書いたものを、左側に書くと、その科目の金額の+−の意味が反対になります。 複式伝票の例で説明すると、   

  
借り方貸し方摘要
現 金  100売 上  100商品を100売上げ、現金が100増えた
売 上  100現 金  100現金を返金し、商品も戻る(取消伝票)


上の伝票では、現金が100増え、売上も100増えます。
下の伝票では、売上は100減り、現金も100減ることになります。

     左側にあると+の科目分類   資産、費用
     右側にあると+の科目分類   負債、資本、売上

<売買の 複式伝票の例  摘要には伝票の説明を記載  数字は通貨単位>

借り方貸し方摘要
<収益 売上>  
現 金  100売 上  100現金取引で商品を100売った
預 金  100売 上  100預金振込み扱いで100売った
<収益 売掛金>  
売掛金  100売 上  100掛で100売った
預 金  100売掛金  100売掛金100が預金に振込まれた(精算)
<費用 買い>  
仕入れ  100現 金  100現金で原材料を100仕入れた
仕入れ  100預 金  100預金振込みで商品を100仕入れた
仕入れ  100買掛金  100掛で材料を100仕入れた
買掛金  100預 金  100買掛金100を振込んだ(精算)
交通費  100現 金  100現金で交通費100支払った
消耗品  100現 金  100現金で消耗品費100支払った
支払金利 100預 金  100預金で支払金利分100支払った

 消費税の取り扱いと記帳

 消費税とは、本来は企業の付加価値分に対する課税で、別名付加価値税ともいいます。人件費や労務費にはかからず、売買に消費税が掛かります。このため付加価値税ということになるわけです。

 普通の売買には原則として消費税が掛かります。一方、預金の出し入れや、売掛金や買掛金の決済、借金・返済、社内の雇用の人件費の支払などには、消費税は掛かりません。

 表示金額が消費税を含んだ金額の場合、「税込み」といいます。表示金額が消費税を含まない金額の場合は「税抜き」と言います。税込み・税抜きは、表示方法の問題で、消費税が掛かる掛からないとは別の問題ですね。

   消費税は、受け取った時には「仮受け消費税」に入り、支払った場合は「仮払い消費税」に入ります。税務署に代わって収税・納税を行っているので、仮受け消費税が仮払い消費税より多い場合は、差額分を税務署に支払うことで、収税代行業務を完了させる必要があります。

 消費税の記帳には、経理ソフトによりいろいろな方法があるようです。自動計算する方法と、消費税の掛かる取引の場合には自分で判断して消費税部分の伝票を追加記入する方法があります。

 ソフトの自動計算を利用するのが便利です。

 経費科目の取引では通常は、消費税が税込みで請求されます。売上・売掛金、仕入れ・買掛金の記帳は、消費税を含む記帳が記帳しやすいですね。スーパーやコンビニのレシートが消費税を含んだ合計額のものが普通なため、そのままの金額を記帳する方が簡単です。消費税込の科目に設定するとその科目は消費税を含んだ総額で取り扱えるようになっているソフトが多いのです。
 なお、企業間取引では、信用取引の一種である掛けで行われることが多く、通常単価は消費税抜きの価格で多くの品種を扱い、数量も大変多いのですが、取引全体を一ヶ月まとめて請求書を作成する時に消費税を足す仕組みです。このため取引は多くても請求書の伝票枚数は取引先1社で1枚ですみます。

 一方取引記帳後の債権債務の精算のための支払や受け取り、労務費、税金の支払などは消費税の対象外です。

 この違いを利用し科目分類別の自動計算の仕組みができます。また、取引ごとに税込み・税抜き・自分の判断での税計算の指定もできるようになっています。

 上記の考え方と、消費税の仕組みがわかっていれば、取り扱い説明が理解できるはずです。  

用 語取り扱い方 
税込み表示金額は、消費税を含む税込み金額と、消費税
税抜き表示金額は、消費税を含まない税抜き金額と、消費税
税込経理財務諸表の各勘定科目に消費税を含み、消費税は別途まとめて計算する。
税抜経理財務諸表は、消費税を含まない。消費税は別途計算し管理。
課税業者消費税対象の売上額が年間1000万円以上の場合は、課税業者となり、消費税を管理し差額を税務署へ納税する。
  

給与の記帳

 給与は、通常当月分をまとめて給与計算し、翌月の一定の日に通貨で直接支払います。発生主義の記帳では、当月分の費用に計上するタイミングでは、まだ支払っていないので費用である給与と、負債の発生(未払い金など)で計上します。

 給与の支払の時に、企業は支払う給与に掛かる所得税や健康保険料や年金の従業員負担分を天引きして預かり、別途会社側から税務署他へ納付することになっています。このため企業の給与の支払の時は、預かった分を差し引いたものがお金の支払分となります。

借り方貸し方摘要
<給与の計上>  
給 与  100未払い金 100当月給与分を当月費用と未払い金に計上
<給与支払い>  
未払い金 100預 金   80給与支払日に給与から天引き分を引いた80を会社の預金から振り込む。
        預り金   20源泉徴収の所得税や社会保険料を預った。預った分は、事後に支払う。
  計   100  計   100複数仕訳の伝票、左右合計は一致
<預り金の精算>  
預り金   20預 金   20 預り金の支払で、預金から20を税務署と社会保険庁へ振り込んだ

賞与や償却費の記帳  期間損益を把握するため毎月引当計上

 月次会計の損益が年間を通じて実際の状況を反映するために、賞与や償却費は年間を通じて費用を分散して負担する必要があります。賞与なら、7月と12月に支給する費用を積み立てておくことが必要です。

 簿記上では、毎月に賞与を計上しておく方法があります。支給月に積立との差額を計上する方法と、積立額累計の反対伝票を入れて一旦クリアし、支給総額を明確化する方法とがあります。

 下記の例では、賞与は支給月に差額計上、償却費は一旦クリアし全額計上の例としました。

借り方貸し方摘要
<非賞与月>  
賞 与   20引当金  20賞与想定分を費用計上(1月から6月)
<賞与月>  
引当金  120預 金  1107月賞与額140(引当金から120、当月負担分20)。お金は、預金から110振込。
賞 与   20預り金   30源泉徴収の所得税と社会保険料を預る。
 計    140 計    140複数仕訳の伝票、左右合計は一致
<預り金の精算>  
預り金   30預 金   30 預り金30を税務署と年金保険事務所等へ振込
   
<設備償却費>  
<通常月>  
償却費    10償却累計額  10予想年償却額の月割り分(決算月以外)
<決算月>  
償却累計額 110償却費    110想定償却費累計クリアの反対伝票。
償却費    125償却累計額 125決算償却費を計上。

設備(償却資産)  投資のキャッシュフロー

 通常の商品や消耗品などは、購入価格全額が費用として計上されます。

 一方、資金の回収が長期にわたる建物や機械設備や、土地や、他社の株式などは、投資に分類されます。投資時点では、投資金額が同額の購入資産になります。このために簿価といわれます。

  投資の一部である設備の場合は、購入金額は設備ごとに定められた償却年数で費用化(償却)されます。償却費分を設備価格から減らすと設備残額が減少し、購入時の価格が過去に遡らないと解らなくなります。このため、購入時の設備金額が帳票上に残り、償却した金額も解るようにする方法として、会計では過去の合計償却費を計上する科目として償却累計額という貸し方科目を設定し利用する方法があります。

  設備を本業で使用し設備償却費が発生する場合は、営業のキャッシュフローに分類します。   

  他社の株の購入や、土地の購入なども投資になります。これらは簿記上は価格は変化しません。株や土地を売却してお金が入ってくる取引や、評価替えする場合は、損益が発生し税務上の問題ともなるので税理士との相談が必要です。設備・投資・土地などに関わる売買のお金の出入りは投資のキャッシュフローに分類されます。  

借り方貸し方摘要
<設備投資関係>  
建 物     100 預金   100建物完成時に計上、完成前は建設仮勘定に計上し、完成後各設備に振替
建物付属設備100 預金   100建物付属設備の計上、途中は建設仮勘定利用
機 械     100 預金   100機械設備の計上、リースの取り扱い注意
償却費     20 償却累計額20月或いは年の償却費計上
    

銀行などからの借入と返済  財務のキャッシュフロー

 銀行からの借入金は、預金や現金になります。借入金の元金部分の返済や異なる口座間の資金移動などは、損益には関わらない取引になります。

 黒字倒産は、損益上は黒字でも資金の返済などで現金が不足し、決済が出来なくなることにより発生します。

 借入金の返済は、元金部分と利息の支払の両方になります。

借り方貸し方摘要
<資金調達>  
預 金    100長期借入金 100銀行から借入。預金増、借入金増
<資金返済>  
長期借入金  30預 金     30借入金の元金部分の返済、損益無関係
支払利息   10預 金     10借入金の金利部分、費用に計上。

決算処理はプロへ依頼  記帳内容のミス発見や経営診断に財務諸表を活用

 棚卸や、設備償却計算はかなり複雑で税制の改正履歴などを反映することが求められるので、顧問税理士に計算や管理を頼む方がよいでしょう。レベルが上がってきたら専門ソフトで管理する方法もあります。

推移表を活用しよう  月次・四半期・年次の推移表で、状況変化が一目瞭然

 記帳したら、すぐに損益計算書や貸借対照表や試算表をチェックしてみましょう。

 誤記入で多いのは、左右の入れ違い、科目の選択ミスなどです。

 月次の推移表では、縦方向に勘定科目や補助科目が、横方向に月次が並ぶ一覧表にまとめてくれるので、全体を眺めて数字の傾向を見ます。入力ミスがあると+−の異常が起こるとか、通常と異なる数字が出てくることから、簡単に見つけられることが多い。

 もう一つのチェックの方法に、預金通帳と元帳の一致確認があります。預金通帳と、経理ソフトの預金の元帳は完全に一致しているはず。これで多くの記入ミスがチェックできます。あと、残高がマイナスになりえない科目のマイナスも異常をアピールしています。

 ソフトのサービス機能の、それぞれの財務諸表の推移表を見ると、入力ミスだけでなく、事業上の変調もすぐに見つけることが出来るようになります。売上や買入の金額がおかしな動きになるからです。

 資金繰りで大切な現金預金のレベルの変化も解ります。残高試算(推移)表をエクセルに出して資金繰り表を作ることも出来ます。

 経理ソフトにデータを入れると、自分自身でいろいろな経営分析が、自由にできるようになります。これこそが、自社で経理ソフトにデータを入れることの効果です。税理士さんに丸投げして出てきた紙の報告では、単純にその月の財務諸表が出てくるだけで、経理ソフトに付属している機能を活用した分析はできません。

簿記のお勧めへ、 会社存続と資金繰り